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長屋の軒先でちょいとドカベン萌談義。
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最近絵を描いてないなぁ。画面的に色気がなくて我ながらつまらない。今度メイド里中でもアップしようか。(それもどうか)




∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴

「やばい、山田、タライ!」

合宿所の自室に入り、電灯を点けた途端里中が叫んだ。
え、なに?俺がタライ?
不思議そうに後ろから室内をのぞきこんだ山田も思わずあっ、と声を上げた。

ぽたり、ぽたり、と天井から水が漏れている。雨漏りだ。
二人はあわてて洗面所へ向かい、手頃な容器とぞうきんをひっつかんで部屋へ舞い戻った。


雨音がし始めたのは1時間も前だったろうか、食堂でチームメイト達と日ハム対南海戦のTV中継を見ていた時、雷鳴と共に突然ざあ、と激しい雨が降り始めた。のんびりと練習中に降らなくて良かったな、などと言い合っていたが、これでは良かったどころではない。たしか天気予報では今日から明日の朝にかけて本降りの雨になるでしょうなどと言っていたはずだった。二人は急いで畳を拭きあげ、雨漏りのしている場所に容器を置いたがどうにも手遅れである。夜も夜、この雨の中今から屋根によじ登って修理をするわけにもいかないし、困ったことに雨漏りは部屋のど真ん中だった。

「まいったな。どこで寝ろってんだ」

里中がぼやいた。もう消灯時間も過ぎている。後は布団を敷いて疲れた身体を横たえるだけ、のはずだったのだが。一時は5人にまで減ってしまった明訓高校野球部も徐々に人員が増えていき、今は補欠が10数人いるほどの大所帯(当社比)となった。当然、合宿所に空き部屋などの余裕はない。

「こっち側に寄せれば一人は寝られるだろ。俺は適当にするから、里中が寝ればいいよ」

山田はいつものように穏やかに笑みながら、押入から布団を引っ張り出してかろうじて湿っていないところに寝床をこしらえ始めた。

「なんだよ、いいって。俺も適当に寝っ転がるよ」

と里中が慌てて山田を制したが、山田はまあまあ、と言って譲らない。

「秋季大会も近いのにエースに風邪でも引かせたらみんなに申し訳が立たないだろ」
「一晩布団で寝ないくらいで風邪なんか引くほど柔じゃないぞ」
「うん、それはわかってるけど、やっぱり念には念をって言うし」

きっちりと寝床を整え終えた山田は、里中の方を振り返ってにこにこと悪びれずそう言った。山田のこの笑顔にどうも里中は弱い。いらない、とあんまり言い張り続けるのも我ながら子どもっぽく意地を張ってるように聞こえてしまう。言葉を詰まらせた里中を尻目に、山田は自分用に薄い掛け布団を引っ張り出して、かろうじて水に濡れていない部屋の隅で寝っ転がる準備を始めた。

「・・・いつも、そうやって」

さっきと違う気配に山田が里中を振り返った。
恨めしげな目をして、里中が山田をにらんでいる。ちょっとこわい。

「俺だけ子ども扱いするんだな!」
「こ、子ども扱いって・・・」
「ふつう、こういうときはジャンケンで勝った方がふとんを取るとか、そうするもんだぞ!」

そっちの方が子どもっぽくないか・・・?と山田は内心首を傾げたが、賢明なことに口には出さなかった。

「ええと・・・でも、俺はこういうの、慣れてるんだ。うちはよく雨漏りをしたから」
「・・・・・・・・」
「俺はホラ、太ってるから、身体も痛くならないし」
「・・・・・・・・」
「えっと・・・その・・」

里中は腕組みをしたままじっとりと山田をにらんで引く気配を見せない。困った。最近は暑くなったり寒くなったり気温差が激しくて、ただでさえ体調管理には気を遣っていたのだ。この時期に里中に体調を崩されて、万一長引いたりされては秋季大会にもろに影響してしまう。

「わかった。じゃあ、俺もそうする」
「え、・・えっ?」
「俺だけ布団で寝るなんて嫌だって言ってるんだよ」

敷いたばかりの布団を里中はさっさとたたみ始めた。

「ちょ、ちょっと、里中」

山田は慌てて里中の腕を掴んで止めようとしたが、里中はすげなくふりほどいた。

「せっかく一人は布団で寝られるのに、なにも畳むこと」
「別にいいだろ。一晩くらい畳にごろ寝したって死にゃしない」

それはそうなんだけど、と山田は首をひねる。せっかく一人は満足に寝られるのになぜ二人一緒にごろ寝しなければならないのか。

「じゃあ、二人でこの布団に寝ればいいんじゃないか?」

とっさに口をついて出た提案に里中が目を丸くした。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

少し顔が赤くなったような気がするのは気のせいだろうか。

「ちょっと、・・・いや、かなり狭いけど、詰めれば寝られないことはないよ」

幸い寝相は悪くないし、と続けた山田にますます里中が顔を赤くした。

「里中?」
「だ、・・いや、それは・・でもっ」

慌てたような里中に山田が不思議そうな顔をして、次に少し顔を曇らせて里中の額に手を当てた。反射的に手から逃げようとした里中を追ってしっかりと手を当て額の温度を確かめる。

「顔が赤いぞ。熱があるんじゃないか?」

首を傾げながら、山田は自分の額に手を当てて温度の違いを確かめた。

「ね、熱なんかないって」
「うん、・・・まあ、今は大丈夫みたいだけど」

他に風邪の兆候がないかと探るように顔をのぞき込んでくる山田の視線から逃れるように、里中は目を反らして、も、もう電気消すからと言いながらぱっと電灯のスイッチを切った。

「里中」

上掛けをつかんで暗くなった部屋の隅にそそくさと座り込もうとした里中を山田が呼び止める。

「ちゃんと布団で寝ないと」
「い、いいよ。俺、ここで」

山田が大きくため息をついた。

「里中、お前本当は体調悪いんだろう」
「そんなことない」
「隠さないでくれ」
「本当だって!」

むきになって返事を返した里中に、山田は押し黙った。山田の沈黙に、里中が気まずそうに口を開いた。

「・・・本当に平気なんだよ。お前心配しすぎ」

暗闇の向こうからは身じろぎすら伝わってこない。だんだん目が暗さに慣れてきたので、里中は目をこらして山田の表情を伺い見た。あんまり強い言い方をしたから、怒らせてしまったのだろうか。里中は居心地の悪い沈黙に落ち着き無く視線を彷徨わせた。

「・・・そりゃこんな狭いとこに俺みたいなのと寝るなんて、嫌だよな」

やっと沈黙を破った山田が、静かな声でそう言った。

「ごめん」

思わず里中は腰を浮かせて違う、と言った。

「違う、・・・そうじゃなくて」

また顔が火照るのを感じる。膝立ちのまま、迷って山田と布団へ交互に視線をやった。そんなつもりじゃないのだ。山田が嫌なんじゃない。嫌じゃないどころか。
むしろその逆で、でもそんなことに気付かれたくないから困ってるというのに。

どうしよう。こんなことになるなら意地を張らないで最初から厚意に甘えてしまえば良かった、と里中は後悔した。山田には悪いが、一人で寝かせてほしい。頼む。勝手な言いぐさなのはわかってる。ああでも今更言えない。なぜと問われたら何も答えられない。
さんざん逡巡したあげく、ようやく意を決して里中は布団の上に移動し、乱暴にどすんと腰を下ろした。

「これでいいんだろ・・・!」

山田がようやく微笑んだ。

「───狭くしてもいいか?」

ああっやっぱり来るのか・・・!そりゃ来るよな?!里中は心の中で悲鳴を上げる。心臓はもう大運動会状態だ。自分でも顔が真っ赤になっているのがわかった。暗くてよかった、と心底胸をなで下ろす。今更ごめん!と言うわけにもいかないと男らしく決意を固めた里中は、返事の代わりに、背中に半分以上のスペースを空けて横たわった。

雨漏りの側に身体を寄せて寝転がった里中にちょっと苦笑して、山田は里中が空けてくれたスペースにそろりと腰を下ろした。

「里中、あんまりそっちに寄ると濡れるよ」

緊張したままぴくりとも動かない肩に手を置くと、びくっと肩を跳ねさせた里中はますます身体を縮こませて、もうほとんど敷き布団から落ちんばかりに身体を固くしていた。なんだかその様子が怯えた小動物のようで可愛くて、申し訳ないけどちょっと可笑しい。山田は里中の肩から手をはずして大きな身体を壁に寄りかかるように慎重に横たえると、もう一度里中、と声を掛けた。

「そんなにそっちに寄らなくても、大丈夫だよ」

うん、と小さな声が返ってきたが、動く様子は全くない。やっとのことで里中を布団で寝かせることに成功したのに、ほとんど敷き布団から落っこちてるようでは結局床にごろ寝とあまり変わらないじゃないか。山田はどうしたものかとしばし頭をめぐらせた。
こうなっては実力行使しかないだろうか。

「う、わあああっっ」

ぱあん、と里中が身体を跳ねさせた。ちょ、ばか、やめろ!笑いの含んだ悲鳴を上げながらばたばた暴れる。

「な、結構こっちも広いだろ」
「て、くそうっ、やめろっ!うあっ、ひゃ」

悪戯っぽくくすくす笑いながら山田は身をよじる里中の脇腹をくすぐった。焦って逃げようとする身体を両腕で抱え込む。つかまえた、と言うと更に里中は山田の腕の中でじたばたともがいた。

「は、はなせよ」

山田は楽しそうにくすくすと笑って返事をしない。ああもう、この馬鹿力!

「昔、こんな風にして、なかなか寝付かないサチ子を寝かしつけたことがあったなぁ」
「なんの昔話だっ」
「ずっとぐずって、なかなか寝てくれなくて本当に困ったよ」
「俺が赤ん坊だって言いたいのかよっ」

里中にしては微妙に鋭いツッコミだったが、そこでうん、と頷いてはいけないことくらいもう山田は学習していたので、代わりにぎゅう、と里中の身体を抱きしめた。

「そういうときは、こんな風にするといつの間にか泣きやんで寝ついてくれるんだ」
「・・・・・・っ」
「人の体温に安心するんだろうな・・・きっと」

やっと暴れるのをやめた里中の少し高い体温が心地良くて、山田は腕の中の身体を改めて抱き直した。暴れたせいかすこし汗ばんで、胸が大きく上下しているのを感じる。里中が落ち着くまでしばらくこうしていよう、と山田は思った。やり方は無茶だが、逆ギレしてしまえば里中は居直るタイプだ。隣に誰がいようとぐっすり寝てしまうだろう。

それにしても。ちょっと俺はおかしいかな、と山田はうとうととまどろみながら胸の内でひとりごちた。同級生の、チームメイトでルームメイトの、バッテリーの相棒の身体を腕に抱いて、こんなにあたたかくて、気持ちよくて、安心するなんて。

「なつかし・・な・・・」

すう、と安らかな呼吸が漏れる。





「・・・・やま、だ?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

漏れ聞こえるのは穏やかな、すう、すう、という音だけだった。

寝るか・・・っ!ふつう、この状態で!!

勝手に大運動会を始めてしまった心臓が酸素と血液を送りすぎてぼうっとなった頭を、里中がなんとか動かして、自分を腕の中に拘束する男の顔を伺い見ることができたのは十数分も経った後のことだった。(里中には数時間は経ったように思われた)

信じられない!こ、この鈍感野郎!体力馬鹿!卑怯もん!とんちき!馬鹿!あほ!まぬけ!くっそー、責任者出てこーーいッ!だいたいこいつはいつもいつも肝心なことは全っ然わかってないくせに偉そうに保護者ぶりやがるんだーーーっ

里中は涙目になりながらありとあらゆる悪態をつき続け声にならない罵倒をしたが、しかし何はともあれとてもじゃないがこんな体勢で寝られるわけがない。山田が寝ている内にさっさと腕の中から逃げてしまおうと里中が身体をずり下げ始めると、よいしょ、というように山田が里中の身体を抱き直した。ぎょっとして里中がまた山田の顔を伺い見ると、やはり安らかに寝息を立てている。またしばらくしてから抜け出そうとするとうぅん、などと小さくうなりながらまた引き戻される。

おれは犬猫でもサっちゃんでもないんだぞ・・・っ?!

泣きそうになりながら、里中は罪作りな想い人の寝顔を恨めしげに睨め付けた。ちょっぴり泣いてたかもしれない。しまいには自棄になって、温かい胸元に鼻面を押しつけて、右手でそうっと寝間着にしがみついてみた。なにやら情けなくて切なくて、鼻の奥がつんとする。このまま眠ってしまえればいいのに・・・と心の中で呟く。目を閉じたが、睡魔は一向にやってくる気配もなかった。




次の日、爽やかに目を覚ました山田太郎(17歳)は、腕の中に不機嫌に目を赤くしたルームメイトを発見してぎょっとした。

「その、・・・もしかして、眠れなかった、のか?」
「・・・・おかげさまで」

昨日の豪雨が嘘のように外は快晴である。雨漏りもいつの間におさまっていた。屋根を修理して、濡れてしまった畳を乾かさなくては。布団も干そう。だが、こんなに気持ち良く晴れ渡った日なら身体も軽く動くだろう ───


秋晴れの日曜日、野球日和となった暑い日差しのグラウンド上で終始調子の悪そうなエースと、彼を気遣っておろおろするチームの大黒柱にチームメイトはそろって手を焼くこととなった。

end





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先週どっかんどっかん雷と豪雨に見舞われた最中に思いついた雨漏りネタです。あの粗末な合宿所じゃ雨漏りなんか日常茶飯事過ぎて、奴らすごい冷静に対処しそうですが、その辺には目をつぶっていただくとして。
布団が一組しか敷けないなら抱き合って寝ればいいじゃない・・・!とか思って嬉し恥ずかしラブラブバカップルをニヤニヤ妄想していたのですが、書き始めてみたら普通にドタバタコメディに・・・なってしまった・・ような・・・?あれ?まあしょせん私の書くものなんてこんなもんですすみません。
前回が太郎さんの片想いだったので、今回は里中の片想いで。ここまではっきり大好きビームを出してるのに気付かない太郎さんも太郎さんだと思いますが、まあ案外太郎さんって、里中の体調とか調子とかピッチングに直に関係する単純な感情の上げ下げに関しては他の追随を許さないものすごい精度で観察してそうですが、それ以外の肝心なところにはびっくりするほど抜けてる大らかなんじゃないかと、最近思います。

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このブログについて
ドカベンにハマって4年目となりました。水島ファンからするとまだまだ新参者ですがよろしくお願いします<(_ _)> 。ちなみにドカベンには某東京ローカル局のアニメ再放送(2008年1月~)でまんまとハマりました。里中かわいいよ里中。

ちなみにそこそこ乙女向けなのでお気を付け下さい。山里メインの球里・三里てところでしょうか。ロッテの三馬鹿大好きです。里中受はたいがい大好物です。

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